30年以上に渡り、NHKビジネス英語講座の講師を勤めてきた杉田敏先生。「実践ビジネス英語」は今年度で終了しますが、同じコンセプトのもと、季刊ムック『杉田敏の現代ビジネス英語』が新たに登場します。

ここでは発売を記念して、特別企画を全4回にわたってお届け。インタビュー記事などを振り返りながら、新作の魅力に迫っていきます。どうぞ最後までお見逃しなく!

※本記事はシリーズ第3回です。前回の記事はこちらからお読みいただけます。

第3回 英語学習の”究極の目的”

今回は英語学習にまつわるお話からお届けします。「実践ビジネス英語」で掲げてきた”究極の目的”とは──?

──杉田先生はアメリカで生活されていたこともあるそうですね。英語を話せるようになるには、どうすればよいのでしょうか?

私自身はニューヨーク時代も英語には苦労しましたよ。いつも苦労しながら、なんとかしています。こればかりは仕方がないでしょうね。ですから「実践ビジネス英語」をやってきて誰がいちばん勉強させてもらっているかと言えば、私です。この番組をすべて聴いているわけですから(笑)。正確にはただ聴いていただけじゃなくて、番組収録の前に準備をすることで、とても濃密な学習をしてきたと言えますね。

英語を習得する上で最も重要なのは環境かもしれませんね。私の孫はシンガポールに住んでいますが、とても自然な英語を話すようになりました。でも、現実にはそういう恵まれた環境にある人は少ない。だから日本で英語を勉強しようと思ったら、なんとかして少しでも英語を使う時間を作り出すことです。使わないと錆びてしまいますから。私も出張で英語圏に行って毎日英語漬けの日を送ると、滞在がたった1 週間ほどであっても、少し英語の力がアップするのを実感します。やはり英語と触れている時間が重要だということですね。

もう一つ気をつけなければいけないのは、英会話の本を何冊買いこんで丸暗記しても実際の会話はそのとおりには進行しない、ということです。重要なのは話をする「内容」を持つということです。有意義な「ビジネス英会話」を交わすには世の中の動きを知っていなければならない。英語で雑談ができるくらいの力を身につけることを目指して勉強してください。

──「雑談ができる」ということが重要なのはなぜですか?

「実践ビジネス英語」の究極の目的は、“英語で雑談ができること”だと私は思っています。日常的に仕事で英語を使っていれば、自分の仕事や専門についてなら英語で話すのはさほど難しいことではないかもしれません。でも、そういう話しかできないと「専門バカ」と思われて、あまり尊敬されません。また、仕事の話をしないようにしたとしても、話すことがなくて相手の話を相づちを打ちながら聞いているだけでは、「退屈な人」と思われてしまいます。リラックスした世間話ができて初めて、相手との距離が縮まり、信頼関係が始まるのだと思います。日本人は雑談が下手だとか、パーティーでは話すことがなくて孤立してしまう場合があるとよく聞きます。

アメリカで働いていた時にいろいろな先輩がいましたが、本当に雑談がうまいんですよ。PRの仕事をしていた時、実にさまざまな業種のクライアントがいましたが、いつも感心していたのは、アメリカのPRマンというのはどんなテーマでも話ができることでした。たとえば、クライアントの1社、コンクリートを扱っている会社に行けば、もちろんコンクリートの話はできますし、その会社の人がロンドンに行ったと言えば、ああロンドンのホテルはあのホテルがいいんですよね、とか、ほんの小さな話題を取り上げて、ちゃんと話ができる。雪が降ってきたら「あ、雪っていうのはすごく幸先がいいんですよね。というのは……」というようなところから始まって、どんどん話を展開することができる。

ビジネスの話には、すぐにはなかなか入れないですよね。そういう時の導入部分のスモールトークというか雑談が上手な人と、私はたくさん仕事をしてきました。「なるほど、こういうふうにビジネストークに入るのか」と、ずいぶん感心した場面がたくさんあるんですよ。このような人たちを間近に見ていましたから、自分もどんなテーマでも話せるようにならなきゃ、と昔から思っていました。

私が働いていたGEのジャック・ウェルチは、ものすごく記憶力のいい人なんです。本当に驚くぐらい。記憶力のいい人って多いんですよね、アメリカのエグゼクティブには。優秀な人というのは、記憶力と興味とを持って、頭の中にいろいろな引き出しを作って、いろいろな情報を入れておいて、何かの時にそれを引き出して使う、ということをしているのだと思います。

次回は3月15日更新予定です

「雑談力を身につける」という目的は、新作ムックでも変わりません。どんな話題にも対応できる力をつけられるよう、さまざまな分野の最新トピックを取り上げます。
そして第4回は、いよいよ新作ムックの内容に迫ります。どんなトピックを、どのように学ぶのか──試し読みとあわせてご紹介します。
更新は3月15日(月)の予定です。どうぞお見逃しなく!

音声DL BOOK 杉田敏の現代ビジネス英語 2021 春号