1月のおすすめ1つ目は、ラジオ英会話12月号より、連載「100回読めばなんとかなる! 大西泰斗の よくわかる 中学英文法」をお届けします。
こちらの連載は今回がいよいよ最終回。これを機にこれまでの「100回音読」を振り返ってみるのはいかがでしょうか。

100回読めばなんとかなる!
大西泰斗の よくわかる 中学英文法 ~最終回 前置詞

皆さんこんにちは。中学英文法を100 回音読で身につけてきたこの連載、いよいよ最終回です。最後はこれから毎日皆さんが出合うinonat など、「前置詞」について説明しておきましょう。

前置詞

前置詞は位置を表す、名詞の前に置かれる単語。前に置かれるのは「指定ルール:指定は前に置く」に従っているからです。

in the classroomは単に「その教室」ではなく、「その教室の内部」が問題とされていることを指定しているのです。
前置詞の理解にはさまざまなポイントがあります。順に説明していきますね。

1. 前置詞の基本イメージ

前置詞は位置関係を基本イメージとする単語です。in は「内部」、onは「上」、at は「点」。

2. 訳語ではなく位置関係をイメージする

前置詞を「で」や「場所を表す」など、訳語や使い方で理解することはできません。例えば、at は「~で・~に」のほか、数多くの訳語に対応しますし、「場所」だけでなく「時刻」など、数えきれないぐらいさまざまな使い方をします。

ですがイメージを使えば簡単ですよ。at の使い方は常に「点」という位置関係に帰着するからです。先のa. は「バス停」という地図上の1点、b. は「時刻」という「点」を示しています。

3. 前置詞は感じ方で意味を広げる

前置詞は位置関係のイメージを基本としますが、位置をどう感じるかによって意味を広げます。

「価格」は目に見える「点」ではありません。でも、私たちには「点」として感じられるためat が使われます。

「 考え」が物理的に「言葉」の「後ろ」にあるのかどうかは、甚だ疑問です。ですが私たちはそう感じる、だからbehind(後ろに)が使われるのです。前置詞の持つ極端に広い意味の広がりは、位置関係が単純なだけにさまざまに解釈されるところから生じているのです。

4. 前置詞の使い分けは感じ方が決める

前置詞の選択は、学習者にとって難題のひとつです。もちろん間違ったっていいのです。ほとんどの場合、コミュニケーションの質には何も影響は与えません。ただ、ネイティブスピーカーの選択の基準は、常に基本となる位置関係にあることを知っておくことはムダではないでしょう。

同じ「渋谷駅で」でも、乗り換えでは「地点」が意識されるためatが、買い物では駅の「内部」にいることが意識されるためinが選ばれています。

前置詞の選択は、私たちにとってたいへん悩ましい問題ですが、「どの前置詞にすべき?」と思ったら、基本のイメージに立ち返って選ぶことが大切なのです。

5. 前置詞は動詞とコンビネーションを作る

前置詞は「自動型」で動詞としばしばコンビネーションを作り、その動作がどこに・どのように向かうのかを示します。動詞と意味がブレンドされて、「ひとつの単語」のようにまとまった意味を持つこともあります。

こうしたフレーズは「熟語」と呼ばれることもありますが、もちろん動詞と前置詞のイメージの組み合わせで理解することができます。a. のat は「点」。そこでlook at は「ある点に目をやる(~を見る)」。for は「向かって→求めて」を表すためlook for は「求めて目をやる(探す)」。over は「上に円弧」であるためlook over は「視線が書類を通過(目を通す)」。into は「~の中へ」なので「中に目をやる(調べる)」となるのです。

6. 前置詞を日本語の助詞と混同しない

前置詞を日本語の「て・に・を・は」など、助詞と同じだと思っている人が少なくありません。例えば次の文で、in を助詞の「に」の役割と同じように考える、といった具合です。

すぐにやめてください。日本語の助詞は、語句の文中での機能を指定するために用いられます。例えば、上の「午前中に」は、「英語を勉強しました」を修飾する語句であることを示しています。前置詞にそんな働きはありませんよ。

英語は配置が機能を与える言葉。a. の文でin the morning(午前中)がI studied English を修飾しているとわかるのは、その後ろに置かれているからです。「説明ルール:説明は後ろに置く」ですね。その証拠にinがなくたって修飾関係は維持されます。

前置詞は助詞のようなつなぎ言葉ではありません。単にin themorning (午前中)というまとまりとして考え、自由に使うことが大切なのです。


イラスト ばばめぐみ

さて、長らくお楽しみいただいた、本連載もこれで終わりです。皆さんにはすでに、英語を統べるシステムと最重要語句のイメージが備わっています。このまま実践の英会話に移る実力は十分お持ちのはずですが、ぜひ「ラジオ英会話」本編も並行してお続けください。「中学英語」だけでは表現のストックがまだまだ足りないからです。皆さんなら、すぐに本編の学習も血と肉に変えることができるでしょう。だって、皆さんには「100回読む」習慣ができているから。繰り返し、しつこく続けること。語学でいちばん大切なことが習慣になっているからです。
それではまた(^-^)

「ラジオ英会話」1月号