オバマ元大統領の名演説から英語を学ぶ ー『あなたの発話力を底上げする 名スピーチで反訳トレーニング』よりご紹介!
オバマ元大統領の名演説から英語を学ぶ ー『あなたの発話力を底上げする 名スピーチで反訳トレーニング』よりご紹介!
2月のおすすめ2つ目は、1月の新刊『あなたの発話力を底上げする 名スピーチで反訳トレーニング』よりオバマ元大統領の「広島演説」をお届けです。
有名な演説には、英語表現のヒントが満載。伊藤先生の「反訳(=反対から訳す)トレーニング」で英語力アップを狙いましょう。
まずは、スピーチの概要を把握! ―オバマ大統領・広島演説(抜粋)
“The memory of the morning of August 6th, 1945, must never fade.”
「1945年8月6日朝の記憶は、決して薄れてはならない」
2016年5月27日、アメリカのオバマ大統領(当時)は、現職の大統領として初めて被爆地・広島を訪問しました。平和記念公園で原爆慰霊碑に献花したあと、被爆者を含む聴衆を前に演説し、人類は核兵器の廃絶に向けて取り組むべきであると訴えました。
演説の原稿は、格調高い表現を多く含みながら、日本の聴衆を意識して書かれたこともあり、文構造や語彙の面では比較的平易なものになっています。また、スピーチの名手らしく、説得力のあるゆったりとした語り口で、聞き取りやすいのも特徴です。
核兵器を使用したアメリカの大統領が在任中に被爆地を訪れて犠牲者を追悼し、核廃絶について語るという、この演説の持つ歴史的な意義についてもじっくり考えながら反復練習しましょう。
一度、スピーチに触れてみよう!
Why do we come to this place, to Hiroshima?
Seventy-one years ago, on a bright, cloudless morning, death fell from the sky, and the world was changed. A flash of light and a wall of fire destroyed a city and demonstrated that mankind possessed the means to destroy itself.
Why do we come to this place, to Hiroshima?
We come to ponder a terrible force unleashed in a not-so-distant past. We come to mourn the dead, including over 100,000 Japanese men, women and children, thousands of Koreans, a dozen Americans held prisoner.
Their souls speak to us. They ask us to look inward, to take stock of who we are and what we might become. ( 中略 )
The world war that reached its brutal end in Hiroshima and Nagasaki was fought among the wealthiest and most powerful of nations. ( 中略 )
In the span of a few years, some 60 million people would die. Men, women, children, no different than us. Shot, beaten, marched, bombed, jailed, starved, gassed to death.
和訳を見てみよう
なぜ私たちはこの場所へ来るのでしょうか、広島へ?
71 年前、明るく雲のない朝に、死が空から落ちてきました、そして世界は変えられてしまったのです。ピカッと輝く光、そして火の壁が1 つの都市を破壊しました、そしてはっきりと示したのは、人類が自らを滅ぼす手段を保有したということです。
なぜ私たちはこの場所へ来るのでしょうか、広島へ?
私たちが来るのは、それほど遠くない過去に解き放たれた恐ろしい力についてじっくりと考えるためです。
私たちが来るのは、亡くなった人々を追悼するためです。含んでいるのは10万を超える日本人の男性、女性と子どもたち、何千何万もの朝鮮半島出身の人々、捕虜となっていた12 名のアメリカ人です。
彼らの魂は私たちに語りかけます。彼らは私たちに内面を見ることを求めます、私たちが今、何者であり、そしてどのような存在になるかもしれないのか注意深く判断することを求めます。(中略)
広島と長崎での残酷な終結へと至った世界大戦は、最も裕福で最も力のある国家の間で戦われました。(中略)
数年という期間に、およそ6 千万の人々が亡くなることになりました。その人々は男性、女性、子どもたち、私たちとまったく違いません。その人々は撃たれ、殴られ、行進させられ、爆撃され、投獄され、飢えさせられ、ガスにさらされ、死に至りました。
次に、スピーチを読み解いてみよう!
重要なセンテンスについて解説します。
Seventy-one years ago, on a bright, cloudless morning, death fell from the sky, and the world was changed.
71 年前、明るく雲のない朝に、死が空から落ちてきました、そして世界は変えられてしまったのです。
★このdeath(死)は「原爆」を指した表現です。「71 年前にアメリカは広島に原爆を落としました」という直接的な言い方を避けたものでしょう。通常は、行為の主体(ここでは「アメリカ」)をはっきりさせたくない場合の言い方としては、「広島に原爆が落とされた」のように受動態を使うことができます。ただし受動態を使うと文章が弱々しくなりがちです。ここではdeath fell from the sky(死が空から落ちてきた)と表現することで、行為の主体に触れない形になっています。
Why do we come to this place, to Hiroshima?
なぜ私たちはこの場所へ来るのでしょうか、広島へ?
★この問いかけが、オバマ広島演説での最大のテーマです。
We come to mourn the dead, including over 100,000
Japanese men, women and children, thousands of Koreans, a dozen Americans held prisoner.
私たちが来るのは、亡くなった人々を追悼するためです。含んでいるのは10万を超える日本人の男性、女性と子どもたち、何千(何万)もの朝鮮半島出身の人々、捕虜となっていた12 名のアメリカ人です。
★先ほどのWhy do we come to this place, to Hiroshima? に呼応させて、このスピーチではWe come to . . . と何度も言うことで、この問いと答えを強く印象づけています。
★ thousands of は注意が必要な表現です。「何千もの~」と訳されるため、その数は最高で1 万であるように聞こえがちですが、thousands of の正確な意味は「thousand(千)の複数倍の~」です。ですから実際の数字が2 万であっても3 万であってもthousands of で表現することができます。このため、「非常に多くの~」と訳したほうがよいこともあります。
★ Koreans は、「朝鮮半島出身の人々」と訳しました。1945 年のことなので、国としての「韓国」も「北朝鮮」もまだ生まれていません。
Men, women, children, no different than us.
(その人々は)男性、女性、子どもたち、私たちとまったく違いません。
★通常の表現は、Men, women and children ですが、このスピーチでは、あちこちでand をあえて使わずに語っています。and を使わないことで、さらに犠牲者が続く、というニュアンスを出そうとしているようです。
Shot, beaten, marched, bombed, jailed, starved, gassed to death.
(その人々は)撃たれ、殴られ、行進させられ、爆撃され、投獄され、飢えさせられ、ガスにさらされ、死に至りました。
★この部分は、その前の部分とつなげて考えてみると文法的には「分詞構文」ですが、省略されている部分を補って、(they were) shot (to death), (they were) beaten (to death), . . . などが略されたものと考えてください。marched(行進させられた)というのは、フィリピンで旧日本軍がアメリカ人やフィリピン人の捕虜などを捕虜収容所まで歩かせたときに、多数が死亡したとされる事件を指していると見る人もいるようです。
★ bombed(爆撃された)は原爆投下を含むと考えられます。
★ gassed to death(ガスで殺された)は、ナチス・ドイツの強制収容所のことを指しているようです。
いかがでしたか?オバマ元大統領の力強い演説も、話している内容が読み取れるようになるとますます感じさせられるものがありますよね。
『あなたの発話力を底上げする 名スピーチで反訳トレーニング』では他にも、ケネディ大統領の「月演説」やカズオ・イシグロの「ノーベル賞晩餐会演説」も扱います。ぜひチェックしてみてくださいね!
音声DL BOOK NHK高校生からはじめる「現代英語」あなたの発話力を底上げする 名スピーチで反訳トレーニング