4月のおすすめ2つ目は、『スピーキング力を手に入れるための 英語独習法』の第3章、「生きた英語は『今すぐその場で』手に入る!」を一部抜粋してお届けします。今は同時通訳者として活躍する著者・横山カズさんですが、本格的に英語の習得に取り組み始めたのは20代のころで、留学経験もゼロといいます。そんな横山カズさんに、英語を独学で学ぶコツを教えてもらいましょう。

ネイティブのSNSで生々しい表現を盗む!

「英文日記」には時間をかけすぎなくていい


 「日記」は自分の感情や思考を文字によって可視化し、整理することができるよい手段です。しかも母語である日本語ではなく、英語で日記をつける場合、「日本語の世界」から「英語だけで表現する世界」に深く入り込むことができます。自分がその瞬間に思い、感じ、考えていることを英語で表現することができる機会を、自発的にいくらでもつくり出すことができるのです。
 「英語で日記をつけること」は、場所を選ばず、たった1人で能動的に英語を使うことができる学習法とも言えるでしょう。しかし、私はこの学習法をすばらしいと思うと同時に、ある種の危惧も持っています。
 私が20代のころ、英語学習の「ライバル」たちの大多数が英文日記をつけていました。それこそ、「英語で日記もつけていないのに英語をマスターしようだなんてありえない!」という空気が流れていたことを覚えています。しかしながら、私は性格的にどうしても毎日コツコツ日記をつけることができませんでした(出会った好きな英語表現のメモはいくらでも取っていましたが)。けれど、ある日私は気づいたのです。そのライバルたちの多くが毎日「同じようなパターンを使い、同じような英文ばかりを書いていた」という事実に。
 当たり前のことですが、ある程度のインプットがなければ、日記で満足に自分の思いを表現することはできません。はっきり言いますが、英文日記は書き始めると、たいていはあっという間にマンネリ化してしまいます。
 ここで今一度、英語で日記をつける目的を考えてみましょう。究極の目的は、「英語で自分の思いを瞬間的に表現できる」スキルを身につけることです。そうであるならば、自分の持っている限られた語彙や知識の範囲内で、「何を、どうやって書けばいいのか分からない」などと悩みながら時間を使うのは本末転倒です。

ネイティブのSNSは現代の「英文日記」


 私は今も日記はつけていませんが、その代わりにやっていることがあります。私が20代のころと違って、今はSNSが発達しています。「自分で必死に日記の内容を考える」よりも「日記のような英文を前もってインプットしておく」ことで、結果的に日記が短時間で書け、自分の思いを瞬間的に口にできるスキルが何十倍も早く手に入ることになります。
 学習の初期の段階においては、誰であっても、自分で考えてひねり出した英文は間違いだらけで当然だと言えます。それなら、この瞬間に、地球のどこかでナチュラルな英文で思いを吐き出しているツイートを見つけ、必要な部分を取り入れて使えるようにすればよいのです。
 方法は簡単。その日、そのときに経験したことや、心に留めたい内容の「キーワード」となる単語(英語)を使って検索するだけです。すると、そのワードを中心に世界中のさまざまな国のさまざまな人たちの思いが、キラ星のように目の前に現れるはずです。そのテーマは今まさに自分が関わっているテーマなので、興味を持って読み進められます。
 そのうち、自分の気持ち、考え方にぴったりと合致する内容のツイートに出会うでしょう。そのツイートこそが、自分が徹底的に音読して身体に練り込むべき英文です。「まさにこれだ!」という英文に出会うまでは黙読していくことで、興味のあるテーマでの速読トレーニングも同時にできてしまうのがこの方法のよいところです。

実践! ツイート検索

 言葉だけではイメージが湧かないと思いますので、実際にこんな感じというのをお見せしましょう(以下の例文は私が創作したツイート例です)。
 例えば、ある日、失恋したとします。「失恋」をテーマに日記を書く前に、「失恋」を意味するbroken heartという英語を打ち込んで検索してみましょう。こんなツイートに出会うことができるかもしれません。

Dealing with a broken heart isn’t easy.
失恋と向き合うのは簡単なことじゃない。


However, my friends always fix my broken heart.
それでも友達の存在が失恋の傷を癒やしてくれる。

 deal withは日常会話では「対処する、我慢する」の意味で使われることが多く、上司が部下にDeal with it!と言えば「どうにかしろ!」、親が子に言えば「我慢しなさい!」という意味になります。fixは多くの意味がありますが、日常会話では「直す」という意味を知っていると使いやすくなります。

 続いて、「空腹(hungry)」でも検索してみましょう。

Eating salad for lunch every day makes me so hungry by the end of the day.
毎日ランチにサラダを食べると、一日の終わりにはものすごくお腹がすくんだ。


My Wednesday lunch date just became a walking date. It’s all good, and I will still be hungry. I’d better mask up and get some take out sandwiches.
水曜のランチデートは歩くだけのデートになっちゃった。それは全然いいんだけど、お腹はすいちゃうよね。(ちゃんと)マスクをつけてサンドイッチのテイクアウトをしないとね。

 mask upは「マスクをする」という新しいイディオム。最新の表現が学べるのもSNSの魅力です。

生きた英語をコピー&ペーストで取り込む


 いかがでしたか。日常のありふれた思いが、あまり難しくない語彙レベルで、躍動感を持って伝わってきたのではないでしょうか。こうした英文を自分で思いつくのは難しいですが、「これは使える!」、「これが自分の言いたかったことだ!」と感動して見つけたツイート(英文)を音読してインプットすることで、効果的に英語が学べるのです。
 検索すると、見たことがない英語の略語や、スペリングミス、文法ミスなどに出会うこともあるかもしれません。けれど、そうした経験も「ネイティブスピーカーでもこんな種類のミスをするんだ!」とか、「学校で習った文法どおりに英語が使われているわけではないんだな」とか、いろいろな意味での学びにつながります。「生きた英語」を知ることができるのもSNSを活用するダイゴ味の1つです。
 まとめれば「自分に似た人の日記を検索してコピーする」、これだけのことですね。昔であれば、人の日記を盗み見ることは簡単にはできませんでした。けれどSNSが普及した現代では、堂々と人の日記を見ることができるのですから、活用しない手はありません。「時間をかけて日記を書く前に、自分の気持ちに合ったツイートを見つけてコピーし、自分に取り込んでペーストすればよい!」、これが私の方法です。「英文日記」の目標は、あくまで会話における瞬発力をアップさせることですから、英語が自在に話せるようになるためにあらゆる手段を取り入れて、自分の心と英語、そして口をダイレクトにつないでいきましょう。それではさっそく、気になる単語を検索してみてください。

横山カズ先生のツイッターアカウントはこちら

横山カズ先生ご自身もツイッターで英語表現や英語学習に関する情報を発信されています。ぜひ、フォローしてみてくださいね。

ツイートでこんなにいろいろな表現が学べるなんて驚きですね。皆さんもSNSを活用して英語学習に取り組んでみてはいかがでしょうか。

スピーキング力を手に入れるための 英語独習法